それは、私が楽しみにしていた三連休初日の2022年9月23日に起こりました。主にAmazonから届くメールをチェックしていた時、『通知:アカウントポリシーご確認のお願い』との表題のメールがありました。当店の販売している商品が『偽造品(テスト購入なし)』であるとして、英国のケンブリッジサッチェル社(The Cambridge Satchel Company)が申立てた旨が記載されていました。犯罪者であると非難されているも同然な行為に、ものすごく動揺しました。というのも、私はかつて大使館の領事部で働いていた経験から、例えば海外で働きたいあるいは住みたいと言った場合、犯罪経歴がないことは重要だと知っているからです(国によっては無犯罪証明が求められる)。当然、どのような罪も軽く考えるべきではなく、仕方なく連休の予定をすべてキャンセルしました。
『テスト購入なしの偽造品』とされたのは英国ロイヤルオペラハウスの商品(キーホルダー1個)で、公式ウェブサイトから直接購入したものです。キーホルダーは英国ロイヤルオペラハウスがケンブリッジサッチェル社とコラボしたもので、ケンブリッジサッチェルという名前がキーホルダーの金具部分に刻印されています。当店はAmazonで1個だけ販売していました。
ケンブリッジサッチェル社に連絡を取ると、同社は当店ショップ名(Royal Style)が同社の取扱店リストになかったという理由により、虚偽の申立てを行ったことを認めました。私は、Amazonセラーフォーラムの出品者を含む様々なインターネット情報から、Amazonにおいて正規代理店以外の出品者を排除するには、Amazonブランドレジストリーの利用が最も効果的であるとの情報を得ました。ブランドレジストリー出品者にはブランドレジストリーのメインメニューからProject Zeroを通し、セルフサービスで偽造品として削除できるという特典が与えられているというのです。ケンブリッジサッチェル社もこのAmazonブランドレジストリーに自社ブランドを登録した出品者でした(このことは同社及びAmazonも認めています)。
AmazonはProject Zeroにより膨大な数の『偽造品』が排除されたと自慢げに報告していますが、当店のケースを含め、市場競争を阻害する目的だけで『偽造品』とされた数多くの商品が、クリック1つで排除されました。ケンブリッジサッチェル社の商品で言えば、私が販売したのはキーホルダー1点だけです。私は英国ブランドを多数扱っていますが、英国ロイヤルオペラハウスのキーホルダー1点を購入するまで、ケンブリッジサッチェル社など聞いたこともありませんでした。失礼を承知で言わせて頂くと、日本人のほとんどが知らないケンブリッジサッチェル社のキーホルダーを偽造するようなメリットがどこにあるのでしょう。ケンブリッジサッチェル社はAmazonで自らを『Small Business(中小企業)』と称して販売していますが、同社が私に行ったことは、同じAmazonで販売するより小さなショップへのイジメと同じです。
ケンブリッジサッチェル社は謝罪しましたが、このような申立てを始めたのは同社であり、Amazonを提訴する結果にもなりました。10年以上Amazonでコツコツ販売していた小さなショップに対し、何ら証拠を提示することもなく、罪の重い犯罪(偽造品)の申立てを行った唯一の英国企業です。それからおよそ二年後、虚偽の申立てを行った背景を知ることが裁判において有利になると考え、情報を求めてケンブリッジサッチェル社に問い合わせましたが、同社からは「詳細は後ほどすぐにお送りします」、あるいは「調べてみます」といった回答のみであり、私の訴訟に責任を負うべき同社ですが、結局、照会に答えることはありませんでした。
このケンブリッジサッチェル社による虚偽の申立てに始まり、Amazonからは多数の知的財産権侵害(商標の不正使用)を含む不法行為が続きました。私の商品は差別的理由により排除され、私が受けた経済的損失と名誉棄損はAmazonを法廷に引きずり出す理由には余りあると考え、提訴という決断に至りました。